こんにちは!
1児の母&薬局薬剤師のたつなです。
この記事では、「インフルエンザと授乳と薬」についてまとめていきました。
どうやって服薬指導したら…?
という方に読んで頂けたら嬉しいです。
では、いってみましょう!
目次
インフルになっても授乳はやめない
一番お伝えしたいのがこれ!

NPO法人ラ・レーチェ・リーグ日本
ニュース・リリース『インフルエンザから赤ちゃんを守るため、母乳育児を続けましょう』
- 通常の場合、直接授乳を中断する必要はありません。
- もし親にインフルエンザ感染の疑いがある場合、例えば⼿洗いをよくして、ウイルス⾶沫防⽌のためのマスクを着⽤するなどの衛⽣⾯に配慮することをおすすめします。
- 2018年2⽉に改訂した⽶国疾病管理予防センター(CDC)のQ&Aによると、インフルエンザにかかっている可能性があったり、診断されたりしたお⺟さんに、⺟乳を与え続けるよう推奨しています。⺟乳は、インフルエンザを含む多くの呼吸器疾患から⾚ちゃんを守ります。
- ⺟乳を介してインフルエンザが感染することはありません。
ということで、インフルエンザになったからといって、授乳をやめないでほしいのです。
急な授乳中断は、
- 乳房の張り、痛み
- 乳腺炎
- 育児負担増(泣き止ませに時間がかかったり、寝かしつけで盛大にぐずられたり)
のリスクがあります。
授乳には複雑な気持ちと事情が絡んでいるので、
というのが正直な気持ちじゃないでしょうか。
(詳しくは、【授乳中の人への服薬指導】①実際と正直な気持ちに書いています)
インフルエンザになったから、インフルエンザの薬を飲むから、という理由で授乳をやめる必要はありません。
(いろいろ書きましたが、インフルを期に授乳やめてやる!!しんどすぎて授乳無理…ということであれば、それももちろんありだと思います)
インフルエンザかも!?の時、どうしたらいい?
授乳してるんだけど、どうしたらいい!?
インフルエンザの薬の考え方
まず、インフルエンザ薬について、少し解説したいと思います。
インフルエンザの薬(抗ウイルス薬)は、
×:インフルエンザウイルスをやっつけるもの。飲むとすぐに治る。
〇:インフルエンザウイルスをこれ以上増えないようにする。飲むと、つらい日数が少し短くなる。
という考え方をします
このことを裏付けるのがこちら。
インフルエンザの薬で有名なタミフル(一般名:オセルタミビル)の臨床成績をご紹介したいと思います。
臨床成績
1. 治療試験成績11,12)
<日本人における成績>11)
国内において実施されたプラセボを対照とした第III相臨床試験(JV15823)の5日間投与におけるインフルエンザ罹病期間(全ての症状が改善するまでの時間)に対する有効性を以下に示す。
インフルエンザ感染症患者を対象とした二重盲検比較試験において、オセルタミビルリン酸塩により、罹病期間の短縮の他、重症度の低下、ウイルス力価の減少、体温の回復期間の短縮が認められた。
(表6)

タミフルカプセル75添付文書より引用
ということで、インフルエンザは病院行って薬もらわなきゃいけない。薬使わないと治らない!という薬ではない、ということがわかります。
×:使わないと絶対に治らない
○:インフルエンザは薬を使わなくても自然に治る
○:薬を使うと、つらい日数が少し減る
重症化リスクなく、症状が軽ければ、病院に行かないのも一つの手
ということで、「重症化リスクがなく、症状が軽ければ、病院に行かないのも一つの手」と考えて頂けたらと思います。
ここでポイントとなるのが、重症化リスクなく、症状が軽ければ、という点です。
重症化リスクが高いと考えられているのが、こちら。
妊婦
乳幼児(0~5歳)
高齢者(65歳以上)
慢性呼吸器疾患
慢性心疾患
糖尿病などの代謝性疾患
腎機能障害
免疫機能不全(ステロイドや免疫抑制剤の内服など)
乳児をかかえて病院に行くのって、かなり大変ですよね?
- 病院で待ってる間にぐずったら
- 待ってる間に授乳したりミルクあげたりできるかな
- 混んでる病院で、何か感染症をもらってしまうかもしれない
- 子どもを病院に連れて行きたくないけど、預けられる人が誰もいない
など、いろんなハードルをクリアしないと病院へ行けません。
もし、「重症化リスクに当てはまらなくて、症状が軽ければ」自宅で安静にして様子を見る、も一つの選択肢に考えてもいいと思います。
別のサイトですが、すごくわかりやすい表現ですのでそのままコピペします。
インフルエンザの治療薬は、なぜ48時間以内に飲まないといけないの?
薬剤師としてのアドバイス:薬は早めが大事だが、「絶対必要」というわけではない
(一部略)
持病もなく健康な成人であれば、インフルエンザの薬は絶対に必要というわけでもありません。混雑した病院に行くのが大変であれば、水分補給に注意しながら安静しているというのも選択肢です。ただし、下記のような重症化リスクを抱える人や、普段健康な人でも40℃を超えるような高熱や意識の混濁などの異状がある場合は、病院を受診することをお勧めします。
授乳中でも使えるインフルエンザの薬
上では病院に行かなくてもいいのでは、と書きましたが、1日でも早くいつもの生活に戻りたい、できるだけ早く仕事に復帰したい、いう気持ちもまた切実だと思います。
ここでは、いざ薬を使おう!となった時について、解説していきたいと思います。
やって頂きたいことは、
- いつも通り授乳する
- 薬は指示を守ってちゃんと使う
の2つです。
授乳中でも安全に使える薬は、成育医療センター 妊娠と薬情報センター にまとまっています。
そこから、インフルエンザの薬についての記載をまとめました。
■授乳中でも安全に使えると考えられるインフルエンザの薬■
オセルタミビル(商品名:タミフル)
イナビル
リレンザ
■授乳中でも安全に使えると考えられる解熱鎮痛薬■
アセトアミノフェン(商品名:カロナール)
イブプロフェン(商品名:ブルフェン)
【参考】
抗インフルエンザ薬Q&A インフルエンザの治療薬は授乳中にも使えますか?
日本でよく使用されているインフルエンザの治療薬にはタミフル®・リレンザ®・ イナビル®などがあります。タミフル®は内服薬、リレンザ®とイナビル®は吸入薬です。
タミフル®に関しては母乳移行量を調べて、非常に少なかったと報告されています。授乳中の使用が問題になる可能性は低いと考えられます。
リレンザ®・イナビル®はいずれも母乳移行量を調べた報告はありませんが、もともとお母さんの血液中にほとんど検出されないので、授乳中の使用は問題にならないと考えられます。
そして、昨年話題になったゾフルーザですが…。
私は、授乳婦があえてゾフルーザを使う理由はないと考えています。
上にあげた、使用経験が豊富で安全性の高い薬があるので、あえてゾフルーザを選ばなくてもいいのでは?思ってしまいます。
「ゾフルーザを使うから、授乳中止を指示された」と話を聞いたことがありますが、
というのが、正直な気持ちです。
ちなみに:授乳中でも予防注射しよう
授乳中にインフルエンザの予防接種をしてもよいですか?
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンで、ワクチンの成分による感染をおこすことはなく、授乳中に不活化ワクチンを接種しても赤ちゃんに悪い影響をあたえることはありません。
むしろ、授乳中はお母さんのインフルエンザ感染を予防することが大切であり、予防接種をうけることが勧められます。
授乳中のお薬Q&A
家の中で蔓延させないために、大人が予防接種しておくことが非常に大切です。
インフルエンザの予防注射の一番の目的は、
×:インフルエンザにならない
〇:インフルエンザによる重症化(肺炎・脳症・入院・死亡)を防ぐ
ことです。
家庭内で蔓延させないためにも、重症化を防ぐためにも、大人も予防接種を!
【参考】
※重症化とは:
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現します。この状態を「発病」といいます。インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が一定程度認められていますが、麻しんや風しんワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することはできません。発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。
厚生労働省 インフルエンザQ&A
まとめ
ということで。
授乳婦がインフルエンザかかった時のまとめです。
- いつも通り、しっかり授乳を続ける。
- インフルエンザになったからといって、授乳をやめる必要はない
- 重症化リスクがなくて、症状が軽ければ病院に行かない、薬を使わないという選択肢もある
- 授乳中でも安心して使える薬がある
インフルエンザうつさないように授乳やめなきゃ!と思う必要はありません。
(しんどくて授乳なんか無理、もうこれを機に授乳やめたい、と思うなら、もちろんそれもありだと思います)
授乳はやめたくてもやめられない、その事情は涙が出るくらいわかります。
ただでさえつらいインフルエンザ。
いつも通りの授乳ライフでなんとか乗り切りましょう。


