こんにちは!
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今回の記事は「授乳中の人への服薬指導 in 調剤薬局」の2回目です。
本当は②で完結のはずでしたが…。
ものすごいボリュームになってしまったので、③まで続けることにしました。
この②では、飲んで大丈夫?の確認についてまとめています。
どうやって確認したらいいの?
という疑問にお答えしたいと思います。
この記事が、授乳中の人への服薬指導どうしよう…と悩んでいる薬剤師の助けになれば幸いです。
では、「②飲んで大丈夫?の確認|おすすめ資料集」いってみましょう!
※妊娠と授乳は考え方が違うので、今回は授乳に限った話とお考えください。
※この記事では
・調剤薬局でよく出会う
・比較的軽度な体調不良
・例:風邪、花粉症など
の服薬指導を想定しています。
※慢性疾患・授乳を中断する有益性が明らかに上、という場合は、この記事の内容が当てはまらないかもしれません。


目次
①のおさらい
①でお伝えしたのはこの4つ。
◆授乳中でも薬を飲める
◆授乳は母親にとってものすごく負担
◆母乳・ミルクの扱いの悩ましさ、沼の深さ
◆授乳は簡単にやめられない
特に大事なのは、授乳は簡単にやめられないという部分。
【授乳一時中断の不利益】
◆しばらくやめると出なくなる
◆張って痛い&乳腺炎のリスク
◆寝かしつけ・ぐずりの対応に困る
◆乳首混乱
これをふまえて、「授乳=薬だめ」ではなく、「授乳を続けつつ、薬もちゃんと飲む」を基本的スタンスに考えていきたいと思います。
※比較的軽度な体調不良の場合です。一部の薬剤では、授乳を中断しての服用が必要になります。
どんな病態が多い?
この記事では、
・調剤薬局でよく出会う
・比較的軽度な体調不良
・例:風邪、花粉症など
を想定して書いています。
具体的にどんな病態が考えられるか、思いつくまま書き出してみました。
◆乳腺炎
◆風邪(ウイルス性の上気道炎)
◆インフルエンザ
◆花粉症
◆副鼻腔炎
◆帯状疱疹
◆痛みいろいろ(子供の抱っこで腱鞘炎になるお母さんもいます)
◆めまい
◆便秘
◆下痢、嘔吐などの消化器症状
◆歯科治療後
など
どれも命にかかわるわけではないけど体調不調はつらい、という状態です。
体がしんどい中、子どもの世話はもちろん放棄できないので(人によっては上の子の世話や親の介護なども抱えていたり)
という気持ちはものすごく切実です。
また、赤ちゃんがいると病院へ行くハードルがめちゃくちゃ高くなります。
- 病院に赤ちゃんを連れていけるかな?
- 病院や薬局の待ち時間でぐずらないかな?
- 授乳や離乳食の時間どうしよう?
- 病院に行く間、誰かに預けられるかな?
などをクリアしないと、病院へ行けなく…。
なかなか病院に行けないので、調剤薬局やドラッグストアの市販薬に頼ることも多いです。
母たちはかなり切実な、藁にもすがる思いで調剤薬局・ドラッグストアに助けを求めに来ています。
添付文書のいつもの文言
添付文書のいつもの文言についてご説明したいと思います。
「授乳中の婦人に投与することを避け、やむをえず投与する場合には授乳を中止させること」
って思ったことのある薬剤師は多いのでは…?
添付文書の情報の多くは、発売時の情報を元に書かれています。
臨床試験の段階では、授乳婦(や妊婦)への安全性は確認されていないので、このような曖昧な書き方にならざるを得ません。
添付文書は私たちの重要アイテムですが、授乳婦(や妊婦)の記載に関しては情報が足りないのが現状です。
※2019年4月に添付文書の書き方が変わりますので、こういった状況も改善されるみたいです
ちなみに。
産婦人科診療ガイドライン産科編2017(P88)にも、
「添付文書では、ただ授乳を禁ずればよいというものではなく、禁止するに足る根拠があれば記載し、なければこれまでの知見を踏まえて意見を記載するべきであるが、現状では十分とはいえない」
という記載があります。
おすすめの資料3つ
って困ってしまいますよね。
◆web:国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
◆web:愛知県薬剤師会「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改定2版)
◆書籍:大分県「母乳と薬剤」研究会 「母乳とくすりハンドブック」
web:国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
ここはご存知の方も多いかもしれません。
国立成育医療センターホームページ内の、「妊娠と薬情報センター」。
本当はここのコンテンツ全部見てもらいたいくらいなんですが、今回ご紹介するのは、「授乳中の薬(一覧表)」
国立成育医療研究センター > 妊娠と薬情報センター > 医療関係者向け情報 >授乳中の薬(一覧表)でたどりつけます。
(でも、サイト内検索orグーグル検索した方が早いと思います)
この「授乳中の薬(一覧表)」に、
「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」
「授乳中の使用には適さないと考えられる薬」
がまとまっています。
え、これだけ?って思うかもしれませんが、これだけです。
表のベースはLactmed(米国国立衛生研究所NIH: National Institutes of Health)。
これプラス「妊娠と薬情報センター」での電話相談5000件の中から相談頻度の高い薬がまとめられています。
(産婦人科診療ガイドライン産科編2017にも「妊娠と薬情報センター」の記載があります)
内容が変わるといけないので、薬品名の紹介は控えておきます。
ですが、この一覧は2つとも見ておくことをものすごくおすすめします。
初めてこれを見た時、
と少し驚きました。
風邪などの病態であれば、だいたいなんとかなると思います
また、適していない薬も、4つしか書かれていません(2019年2月11日現在)。
頭の片隅に入れておくと、いざという時役に立つはずです。
そしてもう一つのポイントは、この一覧は一般の方にも公開されていること。
※トップ > 妊娠と薬情報センター > ママのためのお薬情報 > 授乳中に安全に使用できると考えられる薬
ここを見せながら説明すると、患者さんの納得感も得やすいかなと思います。
web:愛知県薬剤師会「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改定2版)
愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班が作成したものです。
2012年作成なので少し前ではありますが、これだけの内容を無料で読めるのはすごいと思います。
内容の多くをしめるのは「妊娠・授乳と薬」の考え方の解説。
ちょっとした教科書くらいの、しっかりとした内容です。
まずの知識を得たい!という方へ特におすすめです。
さらに、愛知県薬剤師会ホームページの「妊娠・授乳と薬」のページもおすすめ。
妊娠・授乳にまつわる情報が丁寧にまとめられています。
妊娠した時にここを知っておきたかった…と思ったくらい。
このページもかなり勉強になります。
※愛知県薬剤師会さまの掲載許可を頂いています。
書籍:大分県「母乳と薬剤」研究会 「母乳とくすりハンドブック」
大分県「母乳と薬剤」研究会がまとめたものです。
大分県の産婦人科医会・小児科医会・薬剤師会が手を取り合って作成したもの。
(医師会がメンバーに入っているので、医師のやり取りの際に強い味方になります。
と、ツイッターで教えてもらいました)
2017年の改訂3版が最新版です。
6つの情報(※1)をまとめつつ、研究会独自の評価とコメントをしてくれています。
これだけの情報をまとめるのは、相当な労力がかかっているんじゃないかと…。
1500円でいいの?と思ってしまうくらい。
一般の方への販売はしていないようですが、医療従事者であれば大分県薬剤師会のホームページから購入できます。
2010年発行のものは無料で閲覧できますので、気になる方は検索してみてください。
(使うならば、最新版がいいと思いますが…)
(※1 まとめられている情報)
・添付文書
・授乳婦と薬(東京都病院薬剤師会編集)
・国立成育医療センター
・米国小児科学会(American Academy of Pediatrics) Committee on Drugs 2001
・G.G.Briggs インターネットサイトSafe Fetus.Com
・Medications and Mothers’Milk,13th(ThomasW.Hale,2008)Dr.Hale’s Lactation Risk Category
※大分県薬剤師会さまに掲載のご連絡をしています。
内容についてご指摘頂いた場合、記事の修正を行います。
もっと詳しい資料
ざっくりとした確認は上に書いたとおりです。
忙しい外来業務の中では、この3つでなんとかなるかと思います。
ですが、それじゃ物足りない!ちゃんと知りたい!という方へ向けてもう少し詳しい資料をご紹介したいと思います。
◆書籍:実践 妊娠と薬 第2版 -10,000例の相談事例とその情報
◆書籍:薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳
◆書籍:妊娠・授乳とくすりQ&A―安全・適正な薬物治療のために 今これだけは知っておきたい!
◆web:産婦人科診療ガイドライン産科編2017
◆書籍:Medications & Mothers’ Milk
◆web:米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)「Lact Med」
これらは、
■病院薬剤師のブログ■
【お役立ち】妊婦・授乳婦の薬に役立つまとめ
に詳しくまとめられています。
これらの資料、全部手に取るのはなかなか難しいですが、おそらくどの資料も読んだ上で紹介してらっしゃいます。
どれを読めばいいの?
という疑問は、この記事を読めばばっちり解消すると思います。
正直、②はこのブログのご紹介だけでいいんじゃないかと思ったくらいだったんですが…。
だいぶ内容かぶっていますが、出来るだけ違う言葉になるよう努めております。
そして、内容もさることながら、記事から伝わるメッセージもすごいです。
この記事の問いかけに、私も授乳について書こう!当事者目線で何か書けないかな?と思った次第です。
■病院薬剤師のブログ■
【お役立ち】妊婦・授乳婦の薬に役立つまとめ
※管理人さまより掲載許可を頂いています。
+αの知識 RID(Relative Infant Dose)
母親が薬を飲んだとき、母乳を介してどれくらい乳児が暴露するか?の指標にRIDというものがあります。
RID(Relative Infant Dose):相対的乳児摂取量
RID=乳児薬物摂取量[mg/kg/day]÷母親薬物摂取量[mg/kg/day]×100
10%以下であれば、授乳しても問題ないと考えます。
日経DI 2018.12 DIクイズ1にタミフルのRID計算が載っていますので、計算してみたいな~って方は見てみてください。
まとめ
処方せんを受け取って監査をする時、
添付文書はたいしたこと書いてないし…
って悩んだことのある薬剤師は多いと思います。
そんな時に、
◆web:国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
◆web:愛知県薬剤師会「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改定2版)
◆書籍:大分県「母乳と薬剤」研究会 「母乳とくすりハンドブック」
を頼って頂ければと思います。
必ずおさえておきたいのは、やはり妊娠と薬情報センター
これだけではカバーできない場合があるかと思うので、
◆web:愛知県薬剤師会「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改定2版)
◆書籍:大分県「母乳と薬剤」研究会 「母乳とくすりハンドブック」
を知っておくと心強いと思います。
そして、もっと詳しく知りたい!という方は、
◆書籍:実践 妊娠と薬 第2版 -10,000例の相談事例とその情報
◆書籍:薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳
◆書籍:妊娠・授乳とくすりQ&A―安全・適正な薬物治療のために 今これだけは知っておきたい!
◆web:産婦人科診療ガイドライン産科編2017
◆書籍:Medications & Mothers’ Milk
◆web:米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)「Lact Med」
■病院薬剤師のブログ■
【お役立ち】妊婦・授乳婦の薬に役立つまとめより
が強い味方になってくれるはずです。
これら資料を知っておくだけで、目を通しておくだけで、服用指導に自信が持てるはず…!
この記事が、困っている薬剤師の助けになれば幸いです。
※細心の注意を払って記載していますが、誤った内容等がありましたらご指摘頂けますと助かります。

