こんにちは!
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さて、「授乳中の人への服薬指導 in 調剤薬局」の3回目です。
①②をふまえて、実際の服薬指導でのポイント、伝えて欲しいことをまとめました。
では、「③服薬指導のポイント」いってみましょう!
※妊娠と授乳は考え方が違うので、今回は授乳に限った話とお考えください。
※この記事では
・調剤薬局でよく出会う
・比較的軽度な体調不良
・例:風邪、花粉症など
の服薬指導を想定しています。
※慢性疾患・授乳を中断する有益性が明らかに上、という場合は、この記事の内容が当てはまらないかもしれません。


①②のおさらい
①おさらい
①では、授乳の実際と正直な気持ちをお伝えしました。
ポイントはこの4つ。
◆授乳中でも薬を飲める
◆授乳は母親にとってものすごく負担
◆母乳・ミルクの扱いの悩ましさ、沼の深さ
◆授乳は簡単にやめられない
大事なのは、授乳は簡単にやめられないということ。
※比較的軽度な体調不良の場合です。一部の薬剤では、授乳を中断しての服薬が必要になります。
②おさらい
授乳中でもこの薬飲める?という確認はこの資料がおすすめです。
◆web:国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
◆web:愛知県薬剤師会「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改定2版)
◆書籍:大分県「母乳と薬剤」研究会 「母乳とくすりハンドブック」
添付文書は、発売時の情報がほとんどのため、授乳婦(や妊婦)についての記載はもの足りない現状があります。
(2019年4月に改善されるみたいですが)
後で詳しく書きますが、これは服薬指導でぜひ伝えてもらいたい内容です。
指導のポイント
これらをふまえて、服薬指導のポイントをまとめました。
産婦人科診療ガイドラインの考え方
まず、産婦人科診療ガイドライン産科編2017の考え方をご紹介します。
大事だなと思った部分はこちら。
(ぜひ、ガイドラインを直接見て頂きたいと思います。このガイドラインは無料で公開されています)
CQ104-5 授乳中に服用している医薬品の児への影響について尋ねられたら
1.本CQ表1のAのような例外を除き、授乳婦が使用している医薬品が児に大きな影響を及ぼすことは少ないと説明する。
2.児への影響と共に、医薬品の有益性・必要性および授乳の有用性についても説明し、母乳哺育を行うか否かの授乳婦自身の決定を尊重し支援する
3.4.(略)
産婦人科診療ガイドライン産科編2017 P87 より引用
要するに、
と書かれています。
大事なことなので繰り返します。
- 例外以外は、母が薬を飲んでも赤ちゃんへ大きな影響は少ない
- 母乳を続けるか本人に決めてもらおう
- それを尊重して支援しよう
医師はこのような指導をする(と思う)ので、考え方を知っておくのは大事かと思います。
【+αで見て欲しいこと2つ】
①(表1)授乳婦へは投与すべきでない、あるいは慎重に投与すべき医薬品
A.投与すべきでない、B.慎重投与、C.乳汁分泌低下
の3つの医薬品があげられています。
風邪などには当てはまらない薬ですが、一度は読んで頂きたいです。
②葉酸について
P90に葉酸についての記載もあります。
サプリメントの知識として、ぜひ知って頂きたいです。
添付文書のことはちゃんと伝えよう
そして、必ず伝えてもらいたいのが添付文書のことです。
添付文書に「授乳を避けること」などとよく書かれているのは、②でもご説明しました。
(※2019年4月の添付文書改訂で改善されるようです)
こういった情報は簡単に調べることができますので、事前の注意喚起が大切です。
読んだ方が混乱するだけでなく、自己判断での授乳中断につながりかねないので、必ず伝えて頂きたいと思います。
例えばですが、
ネットの情報と実際は異なる場合がありますので、不安に思ったらぜひ薬剤師に相談してくださいね。
といった感じで説明して頂けたらと思います。
何が不安か?
さて、私たちが「大丈夫ですよ」と伝えたとしても、それでもやっぱり不安に思うお母さんもいると思います。
考えられる不安とその説明ポイントをあげてみました。
このような漠然とした不安への対応は悩ましいですが…。
ここはちょっと丁寧に書いていきたいと思います。
ツイッターで「もしも何かあったときに自責の念にかられるとよくないので、授乳の時の服薬は避けるよう指示している」とご意見頂きました。
何をどう不安に感じるかは、母親の性格で大きく変わります。
母親の性格、とらえ方、意見は本当に千差万別です。
なので、これ、といった対応はあまりなく…。
それぞれの話をきいて、丁寧に応えるしかないんじゃないかと思っています。
はっきりとしたお答えでなく申し訳ないのですが、ここは正解のないところなので、皆さまそれぞれ模索をして頂けたら…。
でも、これだけじゃあまり参考にならないので、少しだけ私の考えを書いておきたいと思います。
①あくまで私の考え
あくまでも私の考えなのですが…薬を飲んだことによる不確定の何かより、私の不注意(体調不良で)による事故の方が怖いです。
上手に座ってたはずがバランスを崩して頭を打ったり、ちょっと目を離した隙にビニール袋(手の届かないところにあったはず)をかじっていたり、危なかった!!と冷や汗をかいたことは1度や2度じゃすみません。
こうならないよう、常に赤子の動きを気にかけていますが、体調不調でそれがままならなくなったら。
私が元気じゃないと安全な育児はできないんだ、と思うようになりました。
(今の日本の)育児では、母親の体調を整えることが何よりも大切と感じています。
②SIDS(乳幼児突然死症候群)のこと
「何か」としてSIDS(乳幼児突然死症候群)が思い付きます。
SIDS(乳幼児突然死症候群)は名前から想像つくように、はっきりとした原因のわからない突然死です。
関係のある因子としてうつ伏せ寝、タバコなどが指摘されていますが、「母親の薬剤服薬」の影響は今のところ指摘されていません。
このあたりのことを伝えるのも、一つやり方かもしれません。
(言葉は慎重に選ぶ必要がありますが)
SIDSって?という方のために、厚労省のページを解説においておきます。
◆乳幼児突然死症候群(SIDS)について
睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう
睡眠中に赤ちゃんが死亡する原因には、乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)という病気のほか、窒息などによる事故があります。
○SIDSは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なります。
○平成29年には77名の赤ちゃんがSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第4位となっています。
○SIDSの予防方法は確立していませんが、以下の3つのポイントを守ることにより、SIDSの発症率が低くなるというデータがあります。
(1) 1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょう
(略)
(2) できるだけ母乳で育てましょう
(略)
(3) たばこをやめましょう
(略)
悩ましい事例
で、ですね。
こういった指導が望ましいですが、時には「医師の指示」と異なってしまうことがあります。
例えば、
- 薬飲んだら〇時間あけて授乳してね
- 薬飲む間は授乳やめてね
といった指示。
気軽に授乳中断を指示するな!!
…という心の声は置いといて。
医師が授乳の実態を理解しきっていないこともありますので、こういった現実的でない指示はしばしば起こります。
医師の指示は「守らなきゃ…」と思う方がほとんどですので、母達は「どうしたらいいの…?」と薬局にやって来ます。
医師と患者さんの板挟み。
よくあることですよね。
医師との関係性もあるし、非常に難しいところではありますが。
ですが、
「でも、授乳ってそんな簡単に辞められないですよね…」
など、一歩踏み込んだ声かけをして頂けたら。
この3つの記事を読んでくださった方であれば、授乳婦の気持ちに少し踏み込むことができるんじゃないと思います。
何か一言、今までとは違う声かけができたら。
そんな思いでこの記事を書いています。
また、こういった事例を防ぐ対応として、門前Drと事前にすり合わせを行っておくのもいいかもしれません。
(ぜひ、②でご紹介した資料を活用して頂けたらと思います)
(すごく簡単そうに書いていますが、簡単にいかないことは重々承知です…)
まとめ
さて、これで全3回の【授乳中の人への服薬指導】は終了です。
書き上げるのに2か月もかかってしまいました(汗)
3つともお付き合いくださった方、本当にありがとうございます。
子供を産む前の私は、授乳中の人への服薬指導に自信がなくて、当たり障りのない投薬をしていました。
(今振り返って、後悔しています)
実際に授乳を始めて、
・っていうか、授乳やめるって簡単にできなくない?
・薬剤師にこんな風に対応してもらえたらなぁ
などと思うようになりました。
以前の自分のように、もやもやしている薬剤師の助けになれば。
そして、薬局が私たち授乳婦にとって安心して行ける場所になれば。
そんな思いを込めて、この記事を書きました。
この記事を読んだ方が、少しでも服薬指導に自信を持てるようになれば嬉しいです。
皆さんが授乳婦への力になってくれることを、陰ながら祈っています。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!
※細心の注意を払って記載していますが、誤った内容等がありましたらご指摘頂けますと助かります。

